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 「日々の生活を送るように、当たり前のように描くこと。確かなものを見つけることの難しいこの世界のなかでは、当たり前なことを丁寧に続けることだけが、地に足のついた本当の生へと繋がる道なのではないだろうか。」

和出伸一は言います。その言葉を私たちの前へと立ち現せるごとく、会期中、彼は毎日ドローイングを続けます。暗い会場、中央だけを照らすスポットライト。その下には、こちらに背を向け、ただ一人絵を描く作家がいます。私たちは、まるでそれが生きることそのものであるように、淡々と描き続ける作家の姿を目撃するのです。

和出は学生の頃から「描く」という行為そのものに興味があったと言います。イメージを生み出す「手の動き」、そして、手が作っていく「線」について思いを巡らしてきたのです。「手の動き」が作り上げるシンプルな「線」が、単なる線以上のものになる作業、それがドローイングです。前回、同会場で行われた和出の展覧会では、そのドローイングが壁を埋め尽くしました。今回は、その「描く」という行為そのものを、見る側に提示します。

展覧会といえば「完成品」を展示するものが常かもしれません。しかし本展は、アーティストが作品を作っていく生のプロセスをも展示します。会場風景は、日々、一瞬一瞬で変化し、それは私たちにも生成のプロセスへの参加を、促しているのです。私たちがその場に介入することで何が生み出されるのか?それはその場に身を置いて、初めて体験できるものだと言えるでしょう。作品が生まれる現場、続いてく生活の息遣い、その中に飛び込んでみようではありませんか。